諦めたように笑う


「待って!ロゼットってば!」
猪突猛進に走って行く彼女の後姿を、装備の入った重い道具箱を背負いながら、走って追いかける。
君は身軽だろうけど、こっちは相当な重量の荷物背負ってるんだから、もう少し気遣ってくれても良いと思うんだけど。
まぁ、自分は悪魔で、人間より体力や力があるとはいえ。
それでも疲れる事に変わりはない。
だけど、それを気遣ってくれるような性格じゃないのは、この長い付き合いで百も承知で。
それがロゼットらしいと言えば、そうなんだけど。

いつでも真っ直ぐで。いつでも前向きに、ひたすら目的に向かって走って行く。
脇目も振らず、振り返らず。
そんな君だから、危なっかしくて、放っておけないんだ。
その無防備な背中は、僕が護ってあげないと。

「クロノ!早く!置いてくわよ!!」
「だから、待ってってば!」

だけど君は、そんな僕の考えてる事、これっぽっちも知らない。
知って欲しいとは言わないけれど、たまには後ろを振り返って、気にして欲しい。
でも、やっぱり彼女は、そんな気遣いのあるヒトじゃなくて。
一直線に走って行く。

溜息一つ吐いて。
彼女の分の荷を背負い直して。

「行くわよ、クロノ!」
「うぃ!」

諦めたように笑って、彼女の後ろを追いかけ続けた。

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